ツムラの医療用漢方製剤の概況
日本の漢方エキス剤を牽引する株式会社ツムラ。
そのツムラの第83期(中間期)の株主通信に、医療用漢方製剤の概況が掲載されています。
そこにあります、医療用漢方製剤の売上ベスト10は以下のようになっています。
医療用漢方製剤・2018年度
売上高上位10処方
順位 | 処方番号 | 処方名 |
1 | 100 | 大建中湯 |
2 | 54 | 抑肝散 |
3 | 41 | 補中益気湯 |
4 | 43 | 六君子湯 |
5 | 68 | 芍薬甘草湯 |
6 | 24 | 加味逍遙散 |
7 | 17 | 五苓散 |
8 | 29 | 麦門冬湯 |
9 | 107 | 牛車腎気丸 |
10 | 114 | 柴苓湯 |
ツムラは、医療用漢方製剤の営業施策として「高齢者関連領域」「がん領域(支持療法)」「女性関連領域」を重点3領域として集中してきたそうです。
これまでツムラは、「育薬5処方」として、大建中湯・抑肝散・六君子湯・牛車腎気丸・半夏瀉心湯の5つの方剤に対してエビデンスの確立などを含めて重点的に取り組んできていました。
さらに「育薬5処方」に続く戦略として、補中益気湯・芍薬甘草湯・麦門冬湯・加味逍遥散・五苓散の5つの方剤を「Growing5処方」と称し、エビデンス構築、診療ガイドラインの掲載に努めています。
[quads id=3]日本人が必要としている漢方薬なのか?
「育薬5処方」「Growing5処方」「重点3領域」といった施策が功を奏してか、そこに含まれる方剤が上位に並んでいます。
また、実際の病院の臨床でどのような診察や処方がなされているのかは、このベスト10だけではわかりません。
最近はふつうの病院でも漢方薬を好んで処方する先生も増えてきたとのことですが、実際にどれだけの先生がしっかりとした東洋医学の手法で処方しているかは疑問で、ツムラが示すものをそのまま処方している先生も少なくないと推測されます。
よって、このベスト10だけを鵜呑みにしてはいけないとは思います。
因果関係と相関関係は別物であることを認識しながら眺める必要があります。
しかし、実際の臨床でこういった漢方薬が処方されているということは、日本人の現在置かれた状況を把握するのに参考になる一つの資料にはなると思います。
例えば補中益気湯・六君子湯といった補気薬が使われていることは、気力を失って疲弊している日本人の姿が浮かびますし、抑肝散や加味逍遥散などからは、ストレスが溜まっている社会の一面が出ているようにも思います。
[quads id=2]
ということで、漢方薬の売り上げから、日本の一面を垣間見るという話題でありました。
参考になれば幸いです。
参考図書
都内で鍼灸師をしています。国際中医師の免許を取得するため、勉強中であります。
コメントを残す