『陰陽五行説 その発生と展開』 根本幸夫・根井養智著 薬業時報社

鍼灸の本-東洋医学・漢方・鍼灸を学ぶ

著者 根本幸夫・根井養智
発行 薬業時報社
価格 4057円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆☆
陰陽五行説の成り立ち、歴史、文献などが幅広く網羅されています。医学へ応用された陰陽五行学説の解説はもちろん充実していますが、それ以外の解説も充実していますので、一冊はそろえて読んでおきたいものです。

 

古典的な鍼灸治療をマスターするためには、五行の概念をうまく使う必要があります。五臓の五行、感情の五行、五行穴など、臨床において活用される五行は多く、五行と鍼灸臨床は切っても切れない関係にあります。五行といいますと、五角形の相生相克の関係をすぐに頭に思い浮かべると思いますが、教科書レベルの理解では、それを応用するところまでなかなかたどり着けるものではないと思います。そのため、五行はよく出来た考え方ではあると知りつつも、臨床ではあくまで参考程度にしか取り入れない鍼灸師も多く、また、参考にするくらいならまだいいほうで、完全に迷信として捨て去ってしまう鍼灸師の方も少なくありません。たしかに五行とは、もともと自然哲学、思想的な部分が強いため、現代科学的な医学とのギャップがあると思うのも仕方のないことだと思います。しかしまた同時に、五行の概念を臨床に取り入れて、大きな成果を上げている先生も多く、また古来より受け継がれてきた東洋医学の歴史が、五行の有用性を無言のままに訴えているように思えてなりません。

本書では、五行思想の深い考察が最初の章でなされており、どのような背景で五行という考え方が発生したのかを、『淮南子』『呂氏春秋』『易経』などの東洋思想の本を引用しながら説明しています。さらに章を進めて、五行思想と医学の結びつきを順序だてて解説しています。

本書では、五行論、陰陽論の発生、展開という歴史や基礎理論はさることながら、五臓六腑と五行説の関係も詳述されており、また、色体表の一行一行を解説しているので、五行を十二分に修得することができる、申し分のない一冊です。

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